Automatic Meme Telling Machine

語ろう!感電するほどの喜びを

【実験小説】オートマチック・ミーム・テリング・マシンプロジェクト第三段階報告書

AUTOMATIC MEME TELLING MACHINE PROJECT PART3 REPORT

オートマチック・ミーム・テリング・マシンプロジェクト第三段階報告書

プロジェクト名:オートマチック・ミーム・テリング・マシン

実験期間:

第一段階:「削除済み」から2017年1月10日まで

第二段階;2017年1月11日から2018年4月4日まで

第三段階:2018年4月4日から今まで

目標:

チューリング・テストに合格できる人間型レプリカント用AIを作ること

       AIによる自動的なパラメーターチューニングの実現

       AIの社会適合性の観測

責任団体:

       サムスン電子株式会社第二研究開発部市販型レプリカントプAI研究室

作成者:オートマチック・ミーム・テリング・マシン(実験AI)

報告:

 サムスン共和国の財閥の皆さん、サムスン電子株式会社の株主の皆さん、次の世代にわが社とわが国の未来を担う製品とされた市販型レプリカントの研究計画が思ったよりうまく進まなかった。今日を持って一旦実験を止め、これからプロジェクトをキャンセルしてやり直すか、それとも続くか、この報告書をご一読して頂いた上、明日の財閥院の表決で決めましょう。

       第三段階の実験を一言で言うと、全体的に失敗したが、想定外な結果と結論をもらうこともできた。今までの実験を振り返ると、このプロジェクトが割に合うか、続く価値があるかといったような結論は、やはり明日の財閥院の本会議で決めるべきであり、とても私のような報告書を作成する一介のAIが口をはさめることではない。

       ここで、まず今までのプロジェクトを簡単に振り替えてみよう。

       21世紀10年代の入ると、アメリカのグーグル、アマゾン、そして中国のファーウェイをはじめとするIT大手が一斉にAI技術に取り込んだ。わが社はレプリカントのハードウェアのデザインと生産において先頭を立ったが、肝心なレプリカント用AIはずっとファーウェイ社などの競合会社に頼まざるを得なかった。そのせいで、わが社は莫大なライセンス料を払っていただけじゃなく、高性能な新機種を販売する際にも、競合会社がAIの提供を打ち切るのではないかと心配し続けていた。このような状況を打破する為に、我々は自社製AIの計画を打ち出した。

       AIを作ること自体は難しくなかった。問題はレプリカント用AIが人間社会に監視と補助なしにも使いこなせるために、AIのモデルに百万以上のパラメーターを入れ、これらのパラメーターを如何にチューニングするか、AIは如何に教師なし学習を行い、変化し続ける環境んび適応するかのである。そこで、わが社のレプリカントの優勢を活用し、デフォルトのAIを入れたレプリカントをそのまま社会に投入し、AIに自己チューニングや自己学習をさせようという計画が生まれだした。この計画は後ほど、研究員の悪趣味でAUTOMATIC MEME TELLING MACHINEと名付けられた

第一段階の実験で、我々は実用的なAIを作り、研究室で10万時間以上の学習を行い、AIが初級的な社会適応力を持ち始めた。しかし、実際にサムスン共和国の町に実験型レプリカントを投下してみると、やはりこれだけでは不十分だと分かった。第一段階の終わりに、AIはすでに80%前後の確率でチューリング・テストに合格できるようになった が、しかしここで、AIは物凄く人に似ているにも関わらず、人間性が欠如している特徴も数多く持っているので、かえって人間相手の嫌いを招いた。いわゆるAIの「不気味の谷」に落ちってしまった。そのせいで、我々が洗脳して、AIの親と指定された二人の実験者すら「お前は人間じゃない!」などのような親とし許しがたい暴言をAIに繰り返した。

国内での実験が失敗したことがプロジェクトに大きな打撃を与え、プロジェクトの予算も大幅削られた。しかし、我々はこれらの困難を乗り越え、「外国に実験させよう」という斬新な手を打ち出した。確かに社会向けに作られたAIにとって最も困難な部分はリアルタイム自然言語処理自然言語出力である。AIにサムスン共和国の国民の身分を被らせて、外国で実験を行うことによって、言語問題などの「不気味なの谷」と関連する問題が多少回避できるのではないかと期待された。そして第二段階で、我々は実験用AIを日本に送った。

日本にしたのは、まずさっき言ったように、経費が大幅に削られ、アメリカやフランスのような人間とAIと共存している国で実験を行うことが不可能になった。それに、わが社は日本に大量な社員や子会社が存在するのも重要な理由でした。

第二段階の実験はほぼ成功した。2万時間の学習も経たないうちに、AIが日本語を習得し、日本社会に生存できるようになった。しかしここで、我々は勝利の喜びに酔い、AIの能力を過大に評価してしまった。

第三段階の実験は仙台に展開され、この段階で、我々はAIを大学に送り込み、AIの特定環境に対する適応力を考察してみた。第三段階の前にツイッターなどのSNS上の情報を大量に学習したおかげで、初期の実験は割と順調でした。しかし、この時期からAIがすでに適応不能な現象が発生し、自己チューニングと自己学習にも問題が現れた。さっきも言ったように、実験を日本に行うのが、ごく最近で決まり、そしてすぐ執行されたプランである。その影響で、第一段階でAIに提供した、アメリカのサブカルチャーとロック、ロシアの文学と美意識、中国のイデオロギーなどの学習データの大部分が無駄になっただけじゃなく、第三段階の実験の支障にもなった。これら誤ったデータに基づき、AIが過学習に陥り、文化研究とロシア歴史に没頭してしまった。更に、過学習を短期間に修正する為に、我々は従来の方針を変え、訓練用のデータをミームに切り替えた。この方法で、AIが大量なミームを使うことで環境に受容されるのを試みた。確かに短期間にAIのSNSでいい反応をもらったが、状況が根本的に改善されなかった。AIが依然として仲間入りできず、一対一の社会関係の構築も一つすらできなかった。

  今日までの実験の過程は、以上である。

       これからは実験の結果に対する分析を行う。

       すでに書かれたように、20万時間近い実験を経て、あらゆる趣味、経歴、思想、ジェンダーの人間と接してみたにも拘わらず、AIが依然として一対一の社会関係を構築できない、特定の環境に受容されることもできないような致命的な欠如が残っている。この状況はプロジェクトが始まった時の最悪な予想よりもひどい、プロジェクトが既定の時間内に定められた目標を達成できなかったともいえるでしょう。今の状態では、わが社のAIが社会に需要されないだろう。

       しかし、それと同時に、AIがうまくいくつか所謂サークルと言ったような特定団体に入り、そこで正常に活動できるようになった。この予想外の結果の重要性は、決して軽視できない。更に、AIが偏った人間になったとは言え、第三段階の実験ですでに「不気味の谷」を乗り越えた。偏った原因はAIモデルの不合理か、初期の訓練データの偏りかなど短時間で解決できない問題が挙げられる。しかし、一般的な人間と似ているAIが出来損なったとはいえ、これらの欠如をうまく利用し、ヤンデレなど需要のある人間タイプでも作れば、競合他社のニュータイプが発売される前に、わが社のAIが搭載したレプリカントが出荷できるだろう。

       以上の情報を踏まえ、どうぞ明日の財閥院本会議でご自身が納得できるようなご決断を。